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  • 執筆者の写真松井重樹

週刊読んDayMonth 20200529

更新日:2020年12月26日

2020年5月29日(金)

「安藤忠雄 建築を生きる」三宅理一著

:みすず書房2019年12月24日第1刷発行

2020年3月16日第2刷


すでに書棚に並べている…

「安藤忠雄 建築を語る」(東京大学出版会1999年6月3日初版)

「NHK人間講座 安藤忠雄 建築に夢をみた」(2000年4~6月期)

「安藤忠雄 連戦連敗」(東京大学出版会2001年9月1日初版)

「建築家 安藤忠雄」(新潮社2008年10月25日発行 第13刷2009年5月15日)

そして

「建築家という生き方 27人が語る仕事とこだわり」(日経BP社2001年8月6日初版)…、とはひと味もふた味も違う、第三者による評伝。

活動報告Ⅵで触れているように、昨年8月2日(金)20回目を迎えた「アジア太平洋フォーラム 淡路会議」でゲストスピーカーの一人として立たれた安藤忠雄さん。

 これまで、幾度か目の当たりにしてきた話しっぷりとは全く異なる印象を受けました。ギラギラした目に刃をもって肩で風切る三度笠が、消えていたのです。

 なんだか肩の荷おろした大黒様が、花咲かじいさんよろしく閃光パッパパッパまき散らす、まさに花吹雪ショー。それでいて、遠山の金さんが御白砂で撒き散らす権力傘の桜吹雪のようなものをスッキリさっぱり削ぎながら「いなせ」は失わず、まさに、華に昇華された「一本刀土俵入り」かのように、感じられたのです。

 その理由の一つが、本書のあとがきからうかがえます。ここに作品として生かされている著者とのインタビューが、その当時きっと重ねられていたにちがいない。

 そのひとときひとときを、千夜一夜物語のように、一拍一拍一節一節、慈しんでおられたのではないか。そしてリングサイドから「ボクサー安藤忠雄 あしたのジョー」を観戦する第三者的視野を、安息として得られたのではないか。そうして、たどりついた懐に奥深さが、いっそうめでてこられたのではないか…。

 そんな種明かしと勝手にめでながら、楽しんで愉しんで、読みおえました。

 そうして余韻にひかれ、最初に記した関連する蔵書をくっていたら、最後の「建築家という生き方 27通り」でペースダウン。のどに食いついてきたのが、新国立競技場設計者 隈研吾氏でも、前回56年前の国立競技場設計者 丹下健三氏でもなく、鉄のいまの強さより建物の生命への遠望をうったえる「法隆寺大工 西岡常一」氏。

 薬師寺高田好胤管主の言葉を借りて、「求めても求めても菩薩というものには届かない。せやけども、私はこの道を捨てずにいく」。

 33歳違い同じ9月のお生まれ、25年前4月に鬼籍に入られた生前の西岡常一さんと触れ交じあわれる機会はあったのだろうか…。

 いずれであれ、どんな呼応を、どんな呼吸で、いまこの時なら…丁々発止と戯れられるだろうか。

 その「公案 禅問答」滝しぶきにまみれて、こころをさらしてみたい。


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